毎回同じ施術では対応できない理由|セラピストが施術前に確認したい3つのケース

セラピストのための身体とリンパの基礎知識

セラピストが知っておくべき「体のサイン」の見極め方

「習った手順通りに心を込めて施術しているのに、お客様の反応がイマイチ…」そんな経験はありませんか?

セラピストスクールで施術を学ぶとき、多くの場合は「決まった施術の流れ」 を習います。決まった手順や基本技術を繰り返すこと自体が悪いわけではありません。

しかし実際のサロンワークでは、すべてのお客様に同じ施術体調に関係なく毎回決まった施術を行うことは、適切ではない場合も出てきます。問題なのは、その日の状態を確認せず、前回と同じ施術をそのまま当てはめることです。

なぜなら、同じような不調に見えても、その背景には生活習慣や体調、既往歴、環境など、さまざまな要因が関係している可能性があるからです。

さらに言えば、同じお客様でも日によって体の状態は変わります。

だからこそセラピストには「施術を覚える力」だけでなく「体からのSOSサインを読み取る力」が必要になります。

今回は、いつもどおり施術を進めるのではなく、施術内容の変更や見合わせ、医療機関への相談を検討したい3つのケースをご紹介します。

① 血圧や循環器疾患に関する既往歴がある場合

高血圧は自覚症状がないことも多いため、肩こりや頭痛などの症状だけで判断することはできませんが、カウンセリングでは、高血圧や心臓病の診断歴、服薬状況、医師から受けている注意事項を確認することが重要となります。

BERILUのカルテには、血圧、病歴など記入していただくようになっております。
血圧に対しては、高すぎても低すぎても施術時の圧のかけ方には十分注意が必要です。

当日の体調に不安がある場合や、施術を受けてよいか判断できない場合は、自己判断で施術を進めず、医療機関への相談をお願いしましょう。

また、施術を受けても問題がないことが確認されている場合でも、BERILUでは硬い部分をいきなり強く押すのではなく、無理のないストレッチや周辺部への施術から始めます。

硬い場所だけを強くほぐすのではなく、筋肉同士のつながりや左右差を見ながら、しなやかに動ける状態を目指して施術を組み立てます。特に以下のお悩みがある場合

  • 強い肩こり
  • 頭痛
  • 首の緊張
  • 筋肉の強いこわばり

つい多くのセラピストがやってしまうのが「凝りを強くほぐそうとする」こと。

強い緊張感が見られる場合に、強い施術を行ってしまうことは、さらに緊張感を与えてしまうことになります。大切なのは筋肉を強くほぐすことではなく、緊張状態である交感神経優位の状態から、リラックス状態の副交感神経優位の状態に持っていく事で、循環しやすい体を目指すということになります。

副交感神経優位の状態へ促す施術のポイントは

  • 自律神経を整えるヘッドケア
  • リンパ節のケア
  • ゆっくりと深い呼吸に整える施術

になります。体が流れやすい状態を作れば、強い力を使わなくても筋肉は自然に緩むことは、BERILUの23年の経験に基づいた考え方になります。

*高血圧や循環器疾患のある方については、サロン側で治療しようと考えず、医師からの注意事項を優先します。施術を行う場合も、圧、時間、体位、施術範囲を慎重に判断し、少しでも不安がある場合は施術を見合わせます。
自分を過信せず、医療機関での相談を提案することもセラピストの大切な役目になります。

② 体重増加の原因が脂肪とは限らない

体重が増えたからといって、すべてが体脂肪の増加とは限りません。食事や活動量の変化だけでなく、むくみ、服薬、生活環境、体調の変化、病気など、さまざまな要因が考えられます。
セラピストが原因を断定するのではなく、「いつから、どの程度変化したのか」「ほかに体調の変化はないか」を確認することが大切です。

体重増加やむくみ、疲れやすさなどの背景に、甲状腺機能の変化をはじめとする病気が関係している場合もあります。

BERILUのお客様の中にも以前、急性の甲状腺異常を起こしていたお客様がいました。
若いお客様でしたが、急に太りはじめ、さらに怒りっぽくなっていたため医療機関での相談をおススメしたところ、すぐに治療を行い大事には至らなかったケースです。

珍しいケースではありますが、まれに痛みも感じず、違和感を「太った」「疲れ」と感じサロンに来られる場合がありますので、セラピストとして頭に入れておいた方が良い事例の1つになります。

急な体重変化や強いむくみ、これまでにない疲れやすさなどが続いている場合は、サロンで原因を決めつけず、医療機関への相談を勧めることも必要です。

特に、瘦身コースなどは強い刺激を加える施術になりがちですが、‟強い施術”はその緊張感の増す刺激となります。
緊張感が増すと、筋肉への影響やストレスの蓄積につながりますので、お客様の状態をよく確認することが重要です。

③筋肉の強い強張り、筋力低下や左右差、強い痛みが見られる場合

筋肉が硬く感じられる場合でも、単純な「こり」とは限りません。筋力が低下している、左右で筋肉量に差がある、動かしにくい、触れるだけで強く痛むなどの状態が見られる場合があります。
このような場合も、強い圧で無理にほぐさず、必要に応じて医療機関への相談を勧めます。

セラピストの範疇で施術を行える場合も、気を付けたいのは次の3点です。

  • 強い刺激ではなくストレッチで筋肉を伸ばす
  • 滞りをゆるめる
  • 表層部分のリンパや血流を流す

つまりいきなり強くほぐすのではなく筋肉をしなやかな状態に戻すこと。
何度も同じことを伝える形にはなりますが、動きにくく固まった筋肉は血流やリンパの流れを阻害します。ここをしなやかに動きやすい状態にしなければ、循環の良い体つくりは難しくなります。

しかし、お客様の中には強い刺激を好む方もいらっしゃいます。
私も昔は『強くほぐしてほしい』と言われると、ご要望に応えなきゃと無理をしてしまった時期がありました。
でも、お客様が強い刺激を希望しても、希望どおりの強さがその方の体に適しているとは限りません。

痛みや皮膚の状態、既往歴、当日の体調を確認し、安全性を優先して圧を調整する必要があります。
そして、その理由を分かりやすくお伝えする技術も必要になります。

セラピストに必要な「体のサインを見る力」

お客様の不調を改善するためには、表面の症状だけを見てはいけません。

カウンセリングでは次の視点が重要になります。

  • いつから症状が出ているのか
  • きっかけはあったのか
  • 生活習慣はどうか
  • 環境やストレスはあるのか
  • 食事や嗜好品はどうか
  • 医療機関での経過観察中や病後など重要事項はないか

これらを丁寧に聞きながら、本当の原因はどこにあるのかを考えます。

さらに施術中も

✔体の状態
✔筋肉の質感
✔流れの状態

を触れながら確認し、その場で施術を組み立てていく力が必要になります。

技術だけでは足りない理由

セラピストはお客様の体を任される責任ある仕事です。

だからこそ必要なのは「決まった施術」ではなく、「体のサインを読み解く視点」です。

技術だけでなく

  • 体の仕組み
  • 自律神経
  • ホルモン
  • 生活習慣

などを理解することで、施術の質は大きく変わります。

そしてこの視点こそが、お客様に信頼されるセラピストになるために欠かせない力になります。

BERILU の核となっているボディサインメソッドの考え方

BODY SIGNメソッドは、体に現れている変化だけを見るのではなく、生活習慣、ストレス、既往歴、当日の体調などを丁寧に確認し、施術内容を考えるためのBERILU独自の教育メソッドです。
医学的な診断や治療を行うものではなく、セラピストが自分の施術範囲を理解し、安全に対応するための視点を身につけることを目的としています。
このメソッドは、JPMリンパ協会が提唱する「予防医学リンパケア」の考え方をもとにしています。

人は環境やそれぞれの性格が要因となり、個性を作り上げています。
同じような症状であっても、原因は全く違うところからきていることがほとんどです。
原因は何なのか?
ここを理解して、施術にあたらないと根本的な改善につながらないどころか、症状が悪化してしまう事例も沢山あります。

もしも、自分の施術には自信があるけど、

  • なにかひとつ腑に落ちないところがある
  • 施術の意味づけが必要な気がする

と思う方は、ボディサインメソッド(体の声を聞く)とは何なのか?どういうことができるようになるのか?お気軽に質問してくださいね。

※本記事は、セラピストが安全に施術を行うための一般的な考え方をお伝えするもので、病気の診断や治療を目的としたものではありません。既往歴や症状がある場合、また施術を受けてよいか判断できない場合は、医療機関へご相談ください。

この記事を書いた人

西村 朱美

BERILU代表/一般社団法人JPMリンパ協会 代表理事

2003年より北九州市でサロンを運営。23年間のサロン経験をもとに、体の状態を読み解き、一人ひとりに合わせて施術を組み立てる「BODY SIGN」の考え方を伝えている。

セルフケア講座、企業・行政団体での健康講座、セラピスト育成など、これまで約600名への指導実績を持つ。

無料相談も受け付けておりますので、気になる方は直接聞いてくださいね。

参考文献・参考情報

1.厚生労働省 健康日本21アクション支援システム
「高血圧」
高血圧の特徴や、自覚症状だけでは判断できないことについて参照。

2.国立循環器病研究センター
「高血圧」
高血圧の基本的な考え方や、継続的な血圧測定の必要性について参照。

3.日本甲状腺学会
「甲状腺疾患診断ガイドライン2024」
甲状腺機能低下症に見られる疲労感、むくみ、体重増加などの臨床所見について参照。

4.厚生労働省
「ACT-FASTが重要 一分一秒でも早く治療を」
顔の片側のゆがみ、片側の手足の筋力低下、言語障害など、脳卒中を疑う症状について参照。

5.National Center for Complementary and Integrative Health
「Massage Therapy: What You Need To Know」
マッサージの安全性と、強い施術や健康上のリスクがある場合の注意点について参照。

※本記事は、上記資料を参考に、エステ・リラクゼーション領域における施術前の確認と安全な施術判断についてまとめたものです。病気の診断や治療、医療機関の判断に代わるものではありません。